虚無について

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私はずっとこれを恐れていたのだと思う。


虚無を。
自分の中に広がる無というものを。


前にも書いたけれど、
それは自分の胸の奥にあるぽっかりとした感覚で、
むなしさのようなものだった。

それに触れることがこわかった。
こわいと感じていることすら気づかずに、
そこに触れることをずっと無意識に避けていた。


私の中には空いた穴がある。
だから私は満たされない。

その穴を取り除かなくてはならない。
あるいは、その穴を埋めなければならない。


だけど、そうではなかった。


空いた穴を満たさなければならないのではなかった。


ただそこに触れればよかった。


その穴の中に入っていけばよかったんだ。


穴の中には何もない。
そのように感じられる。
だからとてもおそろしい。

けれどその怖さをこらえてそこにとどまると、
じつはまったく別のものがあることに気がつく。


なんにもないところに何かが満ちている。
それはまるで目には見えない羊水のよう。

あたたかで、
なまぬるく、
私たちを心底ほっとさせるものに満ちている。


そう、
そこには安心が広がっている。


虚無の先には安心が広がっている。


やっぱりこの世界は逆説的にできているんだ。
このことをちゃんと覚えていよう。


虚無の中へと入っていくために。


私は虚無に入っていきたい。

(ナウシカがそうしたように)

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